子どもたちには、のびのびと自由に育ってほしい。
そんな願いを持って幼稚園を探している保護者の方は多いと思います。
今回ご紹介するのは、新松戸駅の近くに園舎を構える新松戸幼稚園の取り組み。松戸市の歴史と共に歩んできた新松戸幼稚園が実践するのは、子どもたち自らが遊びを探し、遊びを通して学ぶことを重視した自由保育です。
大人が教え込まない子ども主体の保育の魅力や、本当の意味で環境や地域社会に貢献する自然教育の在り方について、園長である寺田美子先生のお話をもとにお伝えします。また、新松戸幼稚園にお子さんを通わせている二人のお母さんたちにもインタビューを行いました。
新松戸幼稚園では、子どもたちの自由な好奇心に従って力を伸ばしていく「自由保育」を主軸とし、遊びを通して知的好奇心や探求心、創造力や自主性、社会性を育んでいます。
寺田美子園長(以下、寺田園長) 「本園では、子どもたちが自ら遊びを選び、成長していく過程を大切にしています。日本の幼児教育の父として知られる倉橋惣三氏の考え方をもとに、“幼児の主体的な遊びを通した深い学び”を実践しているのが特徴です。私たちが実践しているのはワークやドリルなどで教え込む教育ではなく、子どもたちの持つ興味・関心を引き出す教育です。子どもたちがもともと持っている自ら育つ力を助長(長所を助けて伸ばすこと)して保ち、育てることが保育者の役割だと考えています」
新松戸幼稚園には、自然教育や複数担任制、特別教育など様々な特色があります。実際にどのようなことを行っているのか、なぜそのような教育をしているのか、詳しく紹介していきます。
新松戸幼稚園の特色のひとつに複数担任制とチーム保育があります。1クラスに1人の担任ではなく、常に複数の担任が子どもたちを見守り、チームで保育を行います。子どもたちの日常に深く関わる先生たちは、言わば成長のサポート役。子どもたちの興味や好奇心を引き出し、学びが深まるように働きかけています。
年長3クラス(3クラスで1チーム):担任5名
年中3クラス(3クラスで1チーム):担任5名
年少3クラス(3クラスで1チーム):担任6名
満3歳児クラス(1クラス):担任2名
他 全体フリー1名、 教頭1名
寺田園長「遊びを通した学びを大切にしていくためには、より多くのプロの保育者が必要です。1クラスに1人の担任では子どもたちの育ちを見落としてしまう可能性があるため、10クラスに20名の教員を配置しています」
また、新松戸幼稚園では子どもの五感の発達を促す特別教育の時間をカリキュラムの中に取り入れています。専門講師から水泳や英語、サッカーを習い、基礎体力を高めたりルールやマナーについて学びます。
寺田園長「自分で探し出す遊び以外に、ルールがないと面白くない遊びもあります。特別教育ではルールのある遊びを取り入れ、子どもたちが幅広い経験ができるようにしています。年間を通して実施しているプール指導はスポーツクラブの温水プールを使用します。専門コーチの指導のもとプールにおける体の使い方を学び、水に親しむ経験ができます。英語教育は、語学ではなくコミュニケーションについて学ぶ時間です。自分とは異なる言語を使う人がいることを知り、関わりを通して親しくなる経験をします。そして、年長から始まるサッカー指導は最初はボール遊びから始まり、瞬発力や集中力を養えるようにします。自由奔放では成り立たないスポーツを経験し、ルールを守ることでみんなが楽しく遊べるということを学びます
スイミング:毎週水曜日実施(年少2学期から)
英語:毎週木曜日実施(年中から)
サッカー:毎週木曜日実施(年長から)
新松戸幼稚園では特に自然教育に力を注いでいます。ぶどう棚やせせらぎのある「エコパーク」では、ホタルを育てたり様々な生き物や植物に触れる経験が可能です。
中でも大きな取り組みが毎年恒例の「エコパーティー」。子どもも大人も一緒になって、身の周りの環境やエコについて考えるイベントです。幼稚園の畑で採れたひょうたんを使った製作コーナーや、ペットボトルを使ったミミズのお家づくり、エコパークで羽化したホタルの鑑賞コーナー、プラスチック廃材を石油に戻すデモンストレーションなど、大人もワクワクするブースがたくさん用意されています。子どもたちが幼稚園で日頃から取り組んでいるエコ活動について、保護者自身も知ることができると好評です。
寺田園長「今年で19回目の開催となるエコパーティーは、みんなが楽しみにしているイベントの1つです。このイベントが始まったきっかけは、子どもたちの好奇心でした。『ホタルはどんなところで生きているの?』『新坂川が汚いとホタルは死んじゃうよ』『だったら川の掃除をしたいよね』という子どもたちの声が起点となり、松戸市の協力のもと園の近くにある新坂川の掃除をしたのが始まりです。しかし、一度の清掃では川の水を綺麗にすることは叶いません。それならば普段からどんなことに気をつけて生活すれば川の水が綺麗になるんだろうと考え、現在のようなエコ活動がスタートしました。このように、大人主導でリサイクルやホタルの飼育を促すのではなく、子どもたちが発見したことを保育者が受け止め、そこから活動に繋げていくことの繰り返しを大切にしています」
新松戸幼稚園は、松戸市の開発の歴史と共に歩んできた幼稚園です。現在の新松戸駅周辺は商業施設やマンションが立ち並んでいますが、幼稚園ができた当初は緑豊かな環境だったそうです。開発と共に失ってしまった綺麗な川や植物、生き物がいる環境を取り戻し、地域の子どもと大人たちが幸せに暮らせるようにすることも、エコ活動の先に思い描いているイメージなのだとか。
寺田園長「エコパーティーは大きな行事ですが、この日だけ特別にエコ活動をしているわけではありません。子どもたちは日頃の生活の中で自分で考えて廃材を集めたり、それらを使い工夫しておもちゃを作ったり、環境のことを考えながら過ごしています。そもそも幼児教育そのものが環境に優しく持続可能であり、社会にも貢献できる性質を持っています。少し大袈裟な表現かもしれませんが、幼稚園の活動こそ、本当の意味でのSDGsではないでしょうか」
新松戸幼稚園にお子さんを通わせている岸さんと加園さんにもお話を伺いました。実際に幼稚園にお子さんを通わせてみて、お二人はどんなことを感じたのでしょうか。
岸さん「うちの子はもともと人見知りな性格だったので、幼稚園に入って大丈夫かな?と不安がありました。プレ保育にも参加したのですが、最初は行きたがらなくて……。でも、幼稚園に来るたびに先生方が『よく来たね、えらいね』と、どんなに小さなことでも褒めてくれて次第に慣れていきました。『泣いてもいいんだよ』と、先生たちが気持ちを受け止めてくれたことも大きかったですね。今ではお友達や先生と遊ぶ楽しさを見つけて、自信を持って園生活を送っています。プレ保育時代が嘘のように『休まない!絶対に行く!』と意気込んでいるくらいです」
加園さん「私は自由教育の理念に惹かれて新松戸幼稚園に通わせたいと思いました。娘が自分のやりたいことを自分で探し、夢中になることができる教育方針が素敵だなと感じたんです。娘の自由な発想や遊びを先生たちが認めてくれているのがよく伝わってきます。また、入園説明会にも参加したのですが、当時妊娠中だった私のことを先生が気遣ってくださったことがとても嬉しく感激しました。保護者のことも大切にしてくれる園だと思います」
お話の様子から、お母さんたち自身も新松戸幼稚園の教育に信頼感を持っていることが伝わってきます。楽しく幼稚園に通っているというお子さんたちは、自然教育を通してエコの意識も深まっているそうです。
加園さん「娘は工作が大好きなんですが、家でも空き箱やトイレットペーパーの芯を集めて工作の材料にしています。それに、大人が水道の水を出しっぱなしにしたり冷蔵庫を開けっ放しにすると娘に叱られます。地球に優しい行動が自然に身についていると感じます」
岸さん「うちの子もそうですね。ごっこ遊びが大好きで、廃材を活用してアイテムを色々と作っています。捨てようと思っていた容器や箱なども『それちょうだい』と言われます。最近はお医者さんごっこにハマっていて、かかりつけの先生のモノマネなんかも上手で、なかなか完成度が高いんですよ(笑)」
幼稚園で色々なことを学び、我が子の遊びの内容がより豊かになったと話すお母さんたち。
入園から今日までの日々を思い浮かべ、お子さんにとって、そしてご自身にとっての幼稚園生活がどのようなものだったかを振り返ります。
岸さん「幼稚園に入園してからは、自分がやりたいことを見つけて遊ぶことができるようになったなあと思います。試行錯誤しながら工作をしたり、自由に想像を膨らませて楽しむ姿も。大好きなノンタンの絵本を通して自然にひらがなを覚えたり、お手紙が書きたくて一生懸命に字の練習をしていたこともありました。大人が教えなくても成長していることを実感します」
加園さん「こちらの幼稚園に入園したことで、子どもだけでなく私自身もイキイキと過ごすことができています。子どもが生まれるまではママ友ってちょっと……と敬遠していたのですが、幼稚園生活の中で出会うママたちはみんな戦友のようで、蓋を開けたらママたちとの交流もとても楽しくて。行事の係なんかは大変そうというイメージがありましたが、実際に経験してみると育児では味わえない達成感も感じられました。子どもだけでなく親同士も関わっていくことができる幼稚園だと思います。まるで第二の青春のような感覚です」
子どもだけでなく保護者自身も輝くことができる幼稚園生活。新松戸幼稚園が、地域に住まうみなさんの居場所として機能していることが伝わってきます。
最後に、これから幼稚園選びをスタートする保護者の方に向けて、岸さん、加園さん、寺田園長からメッセージをいただきました。
岸さん「幼稚園を選ぶときは、ぜひお子さんと一緒に園見学をしてみることをおすすめします。ホームページに書いてあること以上に、園の雰囲気や先生方の人柄が分かります。それから、プレ保育があれば利用してみるのも良いと思います。プレ保育では子どもが幼稚園生活を体験できることはもちろん、保護者同士の繋がりもできます。ただ預けて終わりではなく、保護者自身も楽しむことができる3年間です。ぜひ理想の幼稚園を探してみてくださいね」
加園さん「私自身が幼稚園教諭をしていたときに、『花壇のお花が綺麗だからここに通わせた』と仰っている保護者の方がいました。なるほど、そういう視点で園を選ぶ人もいるのねと驚いたんです。価値観や物の見方は十人十色です。ご自身の価値観に従いつつ、子どもにどんな経験をさせてあげたいか、この園に通わせたらどんな風に遊ぶのか、イメージを膨らませながら園を選ぶのが良いと思います」
寺田園長「現在はインターネットの口コミなど数多くの情報が身の周りに溢れているので、どの幼稚園に通わせるべきか悩んでしまう方も多いはずです。岸さんや加園さんが仰るように、価値観は人それぞれ。自分の目で見て幼稚園を選ぶことが大切です。あまり周囲の情報に惑わされず、ぜひご自身の目で見て確かめてください。新松戸幼稚園では、子どもたちの興味や関心、好奇心を引き出し、探究心につなげる保育を大切にしています。気になった方はぜひ見学にいらしてくださいね」
気になる幼稚園を見つけた場合、まずは幼稚園に問い合わせをして園見学の相談をすることをおすすめします。実際に足を運び、先生や子どもたちの姿、保育環境を見ることで新たな気づきがあるかもしれません。
取材に協力してくださった新松戸幼稚園の皆さん、ありがとうございました!
※今回は新松戸幼稚園の取り組みを紹介させていただきましたが、すべての幼稚園で同様の取り組みが行われているわけではありません。あらかじめご了承ください。
※記事でお伝えした内容は2023年6月現在の情報になります。入園や見学などを検討されている場合はお電話等で直接お問い合わせいただくか、各園のHP等に掲載されている情報をご確認ください。
新松戸幼稚園
〒270-0034
千葉県松戸市新松戸3-256
TEL 047-344-4199
FAX 047-344-4136
(受付時間 AM8:30~PM17:00)
運営:学校法人松本学園
HP:https://shinmatsudo.ed.jp/wp/
Instagram:https://www.instagram.com/shinmatsudo2525/
取材執筆/佐藤愛美(保育ライター)
取材実施日:2023年6月10日
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大人が教え込まない子ども主体の保育の魅力や、本当の意味で環境や地域社会に貢献する自然教育の在り方について、園長である寺田美子先生のお話をもとにお伝えします。
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