3歳から小学校入学前までの子どもたちが通う幼稚園は、遊びを大切にした教育を展開する場所。小学校への入学を見据え、子どもたち一人ひとりの学習の基盤を育てます。
それでは、幼稚園ではどのような教育を行っているのでしょうか。
小学校と幼稚園の教育の違いはなに?
どうして遊びが学びになるの?
子どもに合った教育をしている幼稚園を探すにはどうしたらいい?
などなど、我が子の入園を検討している保護者の方は幼稚園の教育について色々な疑問を抱えているのではないでしょうか。
今回は松戸市の高木幼稚園に足を運び、幼稚園で働く先生や現在お子さんが在籍中のママたちに「幼稚園の教育」について聞いてみました!
昭和40年に創立して以来、1万人以上の卒園生を送り出してきた歴史を持つ高木幼稚園。集団生活の中で多くの経験を通して心身の発達や成長を促していくことと、就学に向けて基本的生活習慣を身に着けることの2つを柱とし、生きる力の基礎作りに根差した教育を目指しています。
園舎に入ると子どもたちの明るく元気な姿が。園を訪れるお客さんにも「こんにちは!」と大きな声で礼儀正しくご挨拶をしてくれます。そして、立派なイチョウの木がある園庭は子どもたちが思い切り走り回ることができるのびのびとした環境。さらに人工芝の「みどりのおにわ」では、ボルダリングや芝滑りといった遊びを経験することができます。
1日の保育の中に様々な静と動の活動を織り交ぜて、子どもたちの心と体の成長を促すと共に、服の畳み方や食事のマナーなど生活する上で大切にしたい内容を、先生たちが丁寧に指導しています。
子どもたち一人ひとりの成長をあたたかく見守り、さまざまなアプローチをしている高木幼稚園の先生たちに「教育」について伺ってみました。幼稚園で行なっている教育とはどんなことでしょうか。
椎名成人園長(以下、椎名園長)「幼稚園は、連続した時間の中で子どもたちの心と体が発達するように教育していく場所です。小学校のように教科ごとの授業ではなく、集団生活の中で展開する経験や活動を遊びを通して主体的に学ぶことができるのが特徴です。当園では、卒園後、小学校への就学を視野に入れ、入園当初はまずは着替えや排泄など自分のことは自分でできるような基本的な生活習慣を身につけられるよう指導しています。年中組や年長組になると聞く力や話す力、考える力等、小学校以降の生活や学習の基礎を培っていけるような保育を実践しています。幼稚園がただ単に子どもを預かる場所ではなく教育の場であるということは保護者の方々にお伝えするようにしています」
「教育」という言葉には、机に座って行うお勉強のようなイメージがあるかもしれません。しかし、「幼稚園の教育=勉強」ではないということが大切なポイント。日々の保育内容について、主幹教諭の陽子先生はこのように考えています。
椎名陽子主幹教諭(以下、陽子先生)「幼稚園は言わば遊びの学校なんです。遊びの中で文字や数に触れていきます。たとえば、石ころを見つけてきた子どもたちに対して『何個見つけてきたのかな?数えてみよう』とか『いちばん大きいのはどれ?じゃあ小さいのは?』といったように問い掛けながら数の概念を学んでいきます。また、4.5歳になると園生活の中で文字への興味が深まります。自分の名前や友達の 名前に含まれる文字について、例えば『“あ”のつくものな〜んだ?探してみよう』というように言葉遊びをしながら、子どもたちの興味を引き出し、まずはその字が何に使われているのかを知ります。文字を書きたい、文字で伝えたいという気持ちが出てきた時にはその 意欲を大切にしながら援助していきたいですね」
学びはすべて遊びの中に埋まっていて、その考えに基づいて保育計画を立てながら子どもたちに関わっている、と陽子先生。
幼稚園で重視しているのは「字が書ける」「数を覚えられた」といった成果ではなく、その過程です。子どもたちが主体的に学び、豊かな経験を通して学んでいけるように先生たちは日々の保育の場面を大切にしているのです。
高木幼稚園の特色のひとつに、幼稚園の活動のほとんどを先生と子どもたちだけで行うということがあります。遠足は親子参加型ではなく先生と子どもたちだけで行き、日常の保育には基本的には保護者が関わることはありません。思い切り子どもたちを園に任せることで、子どもたちの心身はより大きく豊かに成長していくと考えられています。
日々、子どもたちに向き合っている二人の先生たちにもお話を聞いてみましょう!
松崎先生「私が保育でいちばん大切にしているのは、何をする時も全力で楽しむこと。私自身が楽しまないと子どもたちも楽しく遊べないと思うので、何事にも本気で取り組んでいます。また、就学に向けて日々のメリハリも重視しています。楽しむところは楽しみ、けじめをつけるところはきちんとする。就学に向けて子どもたちが自ら考えていけるように指導しています」
竹迫先生「私は子どもたち一人ひとりの個性を大切にしながら、笑顔で優しく向き合っていくことを意識しています。全員の良いところを毎日ひとつずつ見つけてたくさん褒めて、子どもたちの良さが伸びるように働き掛けています。時には叱ることが必要な場面もありますが、ただ叱るだけでは気落ちしてしまうので、その後のフォローも大切にしています」
子どもたちと真正面から向き合う先生たちは何事にも全力。子どもと同じ目線になって遊びを楽しみ、経験からたくさんのことを学べるようにと先生自身もそれぞれの持ち味を活かした保育を展開しているようです。
幼稚園の教育内容について保護者の皆さんはどのように感じているのでしょうか。お子さんを高木幼稚園に通わせているお母さんたちにもお話を聞いてみました。
お子さんが幼稚園に通って変化したことや、日々の姿から見えてくる幼稚園の教育内容についてお母さんたちはどう思っているのでしょうか。
小笠原さん「日常生活の中のマナーなど、親が教えていないことまで知っていたりするので、きっと先生方が丁寧に指導してくださっているんだろうなと子どもの姿を見ていて感じます。発表会のダンスも先生たちのお手本がなくても子どもたちだけで踊っているので、行事があるたびに『こんなこともできるようになったんだ!』と感動しています」
高木幼稚園の細やかな教育に惹かれて入園を決めたという小笠原さん。幼稚園で学んだことがきっと小学校でも活きてくるはずと期待感を持って我が子の園生活を見守っているそうです。
齊藤さん「うちの子は入園当初は言葉がゆっくりめだったんですが、幼稚園に通い始めてから自分の考えや思いを言葉にして伝えてくれるようになりました。家庭では親やきょうだいとしか会話をすることがないけど、幼稚園ではたくさんのお友達や先生と接する機会があるので、良い刺激になっているのでしょう」
毎日のお子さんの会話から、園の楽しげな様子が伝わってくると話す齊藤さん。先生が細かいところまで目配りをしてくれるおかげで、身支度を自分で行なったり基本的な生活習慣が身についてきたようです。
岸川さん「家庭での子どもの姿を見ていると、幼稚園で学んできたことがたくさん見えてきます。食事中のマナーや衣類の畳み方、生き物への思いやりの気持ちなど、きっと先生たちが教えてくださっているんですね。庭の花にお水をあげたり、私が洗濯物を畳んでいると一緒にやってくれたり、自らお手伝いしてくれることが増えました」
長男が年中の時に他園から転園してきたという岸川さん。入園の決め手は、見学の際に園の子どもたちが大きな声でしっかりと挨拶をしてくれたことだったそうです。
そして、近年は新型コロナウイルスの影響で暗いニュースも多い中、高木幼稚園では子どもたちがいつもと変わらずのびのびと過ごせるような保育を展開していたそうです。
齊藤さん「コロナ禍で暗いニュースが多い中、子どもたちは毎日笑顔で幼稚園から帰ってきました。行事も例年通りとはいかず制限されることもありましたが、そんな中でも思い切り楽しむ方法を先生たちが子どもに教えてくださっていたんです。特別なイベントがなくても日常の保育が充実しているので毎日が本当に楽しいようです。親としても勉強になることばかりですね」
小笠原さん「先生方には本当にあたたかく見守っていただいています。うちの子も先生が大好きで『先生も一緒にキャンプに連れて行っちゃだめ?』なんて言うくらいなんですよ(笑)。陽子先生はまだ入園していない下の子の名前まで覚えて呼んでくださって……あたたかくて丁寧な対応に感激しました」
岸川さん「先生たちが子どもたちだけでなく、親のことまで覚えて話し掛けてくれるのは嬉しいですね。家族ぐるみで支えてもらっていると感じます」
齊藤さん「ひとつ、忘れられない出来事があります。長女が音楽発表会の前に感染症にかかってしまい、園を長期間お休みをすることになったんです。本番まで練習期間が短いのでお見舞いに来てくださった先生に当日はお休みしたほうがいいですかと伝えました。その時に先生が『●●ちゃんには音楽発表会で頑張ってほしいと思っています。登園してからきちんと教えますので、何も心配いりません』と言ってくださって。若手の先生だったのに頼もしくて格好良くて、お言葉に甘えてしまいました。そして迎えた本番、長女は演奏を見事にやりきってくれて、その姿を見て泣いてしまいました」
我が子の姿を振り返りながら嬉しそうに話すお母さんたち。幼稚園での経験が確かな成長に繋がっていること、そして先生たちのあたたかい関わりが子どもだけでなく保護者の心まで支えているということが伝わってきました。
陽子先生「1人ひとりに丁寧に関わっていこうねと先生たちにも日頃から伝えているんです。ここは、お母さんたちが大変な思いをしながら授かって大切に育ててきた命をお預かりするところなので、子どもと保護者の皆さん全員に心を寄せて丁寧な保育をしていきたいと思っています」
最後に、椎名園長と陽子先生より、幼稚園を探している保護者の方たちに向けたメッセージをいただきました。
椎名園長「幼稚園にはそれぞれに建学の精神があります。高木幼稚園でも6月から園の見学会をおこなっています。また8月には入園説明会と体験保育を計画していますが、ぜひ色々な園を見て、園の雰囲気を感じ取りお子さんに合った幼稚園を見極めて選んでいただけたらと思います」
陽子先生「実際に園を訪れるとそこで過ごしている子どもたちの姿や先生方の関わり方が見えてきます。各園が独自の教育を行っていると思いますので、高木幼稚園に限らず我が子を任せたいと思える幼稚園に出会い、入園を決めてもらえたら嬉しいです」
一口に「幼稚園の教育」と言っても、園ごとに環境や活動内容は異なります。どのような理念を持って教育しているのか、まずは現場に足を運ぶことから園探しがスタートします。子どもにぴったりの園と出会うためにも、園選びにおいて何を重視したいのかをあらかじめ整理しておくこともおすすめです。もし疑問や不安があれば、ぜひ幼稚園に直接問い合わせてみてください。
今回取材に協力してくださった高木幼稚園の皆さん、ありがとうございました!
※今回は高木幼稚園の取り組みを紹介させていただきましたが、すべての幼稚園で同様 の取り組みが行われているわけではありません。あらかじめご了承ください。
高木幼稚園
〒270-2213
千葉県松戸市五香8-1-9
TEL.047-387-4809
運営:学校法人高木学園
取材執筆/佐藤愛美(保育ライター)
3歳から小学校入学前までの子どもたちが通う幼稚園は、遊びを大切にした教育を展開する場所。
小学校への入学を見据え、子どもたち一人ひとりの学習の基盤を育てます。
行事を作り上げる先生たちの熱い思いや、子どもと一緒に行事に参加した保護者の感想を聞いてみました!
太陽が降り注ぐ広い園庭で、元気いっぱいにどろんこ遊びをする子どもたち。先生も子どもたちと同じ目線になって全力で遊び、全身どろんこまみれ。みんなの笑顔と笑い声が夏の園庭に弾けます。
大人が教え込まない子ども主体の保育の魅力や、本当の意味で環境や地域社会に貢献する自然教育の在り方について、園長である寺田美子先生のお話をもとにお伝えします。
広大な敷地の中に農園を有し、子どもたちは本格的な農業体験に挑戦しています。豊かな自然に触れて育つ子どもたちの姿や、小学校入学を視野に入れた教育についてお話を伺いました。
初めての幼稚園生活は、お子さんにとっても保護者の方にとってもドキドキするものです。特に入園前には見学や情報収集、面接対策など気になることがたくさんあると思います。
預かり保育とは、幼稚園が通常の保育時間以外に子どもたちをお預かりする制度のことで、通常の時間に送り迎えが難しい就労中の保護者の方たちから注目されています。
推薦制度や送迎ステーションの仕組みについて詳しく伺いました。利用者のママたちの声もあわせてご紹介します!
幼稚園に入園できるのは年少クラスから、というイメージが強いかもしれませんが「プレ保育」や「満3歳児クラス」の仕組みを利用すると年少クラスに入る前に幼稚園に通うことができます。
松戸市では、幼稚園と連携した小規模保育施設からの「推薦制度」の導入や幼稚園の預かり保育の拡充を支援することで、共働きの家庭でも幼稚園を選択できるよう力を入れています。